ルワンダの首都キガリ郊外にある虐殺記念館。
海外からの来館者は多数いるものの、ルワンダ人の来館者はほぼいないという。
あれから20年が経過した今でも、被害者側の民族はもとより、加害者側の民族も決して思い出したくない悲しい記憶なのだろう・・・。
映画「ホテルルワンダ」の舞台にもなったホテルミルコリンで知り合ったレイミー・
カイタレ君と一緒に記念館を訪れた。
現在22歳、虐殺事件が起こったときは2歳だった彼も、その被害者の一人だった。
お母さんや兄弟全員が彼の目の前で殺され、お父さんは民兵たちにどこかに連れて行かれてその後行方不明。奇跡的に難を逃れた彼だけが近所の一家に連れられ隣国ブルンジに避難した。
そして事件が収まり祖国に帰還を果たした後、現在に至るまで天涯孤独で暮らしている。
「この人が僕のお母さんなんだ」
そう言いながら一瞬こちらを向いた後、すぐに写真の方を向いてしまった彼。
横顔から頬に伝わる涙が少しだけ見えた。
記念館の一室には当時の彼と同年代の小さい子どもたちの写真が飾られている。
その横にそれぞれのプロフィールが記されている。読むだけで胸が苦しくなり、何もわからないまま人生を終えることになってしまった子どもたちに心から同情し、同時に命を奪った者たちに対する深い憎悪の念が湧き起こる。
虐殺事件の時、ホテルミルコリンの支配人の知恵と勇気と機転によって、何千人ものルワンダ人の命が救われた。このことが映画「ホテルルワンダ」では細かく描写されている。この英雄とも言える人物が勤務していたホテルミルコリンで彼は今働いている。
「このホテルで働けていることが何よりの自分の誇り。せっかく奇跡的に命を救われたんだからね。この命を大切にして、これからも強く生きていくよ。」
と、少しだけ笑って力強く答えてくれた彼。
思わず胸がいっぱいになってしまい、しばらくの間何も言うことができなかった・・・。