１，６００ｍ地点からロープウェイに揺られることおよそ１時間半、ついにその時はやって来た。標高４，７００ｍ、自己新記録更新の瞬間だ。

終点から更に少しだけ登ったところに頂上がある。アベマリア像が目印で、これはさすがに迷いようもない。さあ、あとはひたすら登るだけで念願の新記録達成となる。

が、・・・重い、なぜか体が重い・・・。そして、頭が痛い。両耳の少し上辺りだろうか、横串を刺されたような痛みが走る・・・。さらに、若干の吐き気、めまい、悪寒・・・。これはもしや、（こうざんびょう？）漢字変換もできないくらい朦朧とした感覚が襲ってきた。

（う～、やはり途中で一切休憩を取らず、一気に登ってしまったのが良くなかったのか・・・）

すぐにロープウェイで下りて、高度を下げれば好転することは重々承知しているのだが、いかんせん、マリア像にたどり着かなければ本当の新記録にはならない・・・。

健康な状態なら全っ然大した距離ではないのだが、今のこの状態では果てしなく遠い距離に感じてしまう。高山病、恐るべし・・・。

本来見るべきだった山々の景色も、カメラに収めるのが精一杯でほとんど目もくれず、割れそうで重たい頭を揺らしながら、やっとのことで頂上へ。

おお、マリア像！これほどマリア像を愛おしく感じるのは人生最初で最後のことかも知れない。

にしても、頭がいたたたた・・・。

こうして最高到達点自己新記録の達成感と誇りだけはしっかりと胸にしまい、そそくさと下山することになるのであった。