チュニジアの南部、サハラ砂漠の中にあるとある村。
宿泊先のキャンプ場の係員のおじさんが言う。
「ずいぶん早い時間に着いたんだね。
らくだでの砂漠ツアーは夕方からなんだよ。
それまで大変だと思うけど、十分気をつけて過ごしてな。」
イマイチ意味が分からずに首をひねっていたのだが、
程なくその言葉の意味が理解できた。
日なたは50度。
さりとて日陰でも43度。
通気性のかけらも無いテントのベッドは46度と
とてもいられたもんじゃない・・・。
ましてや寝られたもんでもない・・・。
(う~ん、夕方まで一体どこでどうやって過ごせばいいんだか・・・)
身の置き場のないまま涼を求めてキャンプ場内を一時間ほどさまよい、
すっかり無駄に体力を消耗して途方に暮れていたところ、
「バシャ、バシャ」
(ん?水の音?)
残っていた体力をすべて振り絞り、音のする方向へ急行する。
おお、これはオアシス!
透明感は皆無。むしろちょっとドロドロな感じはあったのだが、
この際そんなことは言ってられない。
早速着ていた服を脱ぎ散らかし、
濁りで底のまったく見えない池に飛び込み、
熱く焼け付いた皮膚を冷やす。
(あ~、生き返る!)
2時間ほどの入水で全身がふやけきった頃、気温はようやく40度を下回った。